ふと我に返ったあたしは、ざわついた気持ちのまま、泉くんの姿を探していた。各クラスを回った後、自分のクラスの前に近づいた時、教室のドアが開いた。
あたしは思わず隠れてしまった。
すると、反対の方から泉くんが歩いて来て、開いた教室のドアからは彼のお父さんとお母さんが出てきた。
「ちょうど良かった。いま、先生との面談が終わったところなんだ。一緒に帰ろう」
彼のお父さんは、彼に優しく微笑んでいた。それに対して泉くんは……。
「は、はいっ!」
泉くんは、あたしがこれまでに見たことのない笑顔で返事をしていた。
親子で話している様子を見て、あたしは訳が分からなくなっていた。
あたしの前ではあんなに怒って、いじわるで。
なのに、お父さんとお母さんの前では、見たこともない笑顔で話していて、まるで別人みたいだった。
(いったい、どっちがほんとうの泉くんなの? それとも……どっちの泉くんもニセモノなのかな)
あたしは泉くんの二面性に戸惑い、その場に立ち尽くしていた。
*
泉くんがお父さんとお母さんと一緒に帰ったあと、立ち尽くしていたあたしは我に帰った。
泉くんに質問しようと思って追いかけてきたのに、目の前の出来事に呆然として、目的をすっかり忘れてしまっていた。
(結局、泉くんに直接聞こうと思ってたのに……聞けなかった)
あたしは自分なりに頭を悩ませていた。
(聞いちゃいけないことのような気もするけど……でもやっぱり気になる。こういう時ってどうすればいいのかしら……)
「あっ!」
あたしは、泉くんと大ゲンカする前に彼と話したことを思い出した。
*
「ねえ、泉くんってば~!」
「あの、太刀川さん? あなたはボクに質問しすぎです。何度も言っていますけど、もう少し自分で考えるってことはしないんですか?」
「えー、でも、泉くんはいろんなこと知って胃るじゃない。聞いちゃいけないの?」
「聞いちゃいけないわけじゃありません」
「だったら!」
「あの、ボクの話を聞いていますか? 自分で考えることは大事だから言っているんです。それに、質問したかったら、ボクじゃなくて先生に聞けばいいじゃないですか。先生はボクなんかより長く生きているし、少なくとも……ボクよりは絶対に物知りだと思うんですけど。それに、ボクたちにいろいろ教えてくれる『先生』をしているんだから、ボクに聞くよりずっと合理的だと思います。だって、そのための先生でしょう?」